TSして藤丸立夏になった男だが、好き勝手にやってたら某ぐだ子みたいになってた件1
この小説を書いた犯罪動機について
TSモノを書いた事が無いのでヤってみた
FGOをやっててモヤっとした事をネタにしてみたかった
特異点での出来事はさしてどうでもいい。
ほぼ原作通りになったんじゃね?
ただぐだ子はどう思ってんだろう? という内面の吐露を書きたかった。
この作品の予備知識:
現実→FGO藤丸憑依
原作知識→なし
独自解釈
チート→なし
原作改変でお送りします。
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普通のサラリーマンをしながら、収入の殆どを趣味に投じて満足する。
それが自分の趣味だった。
かと言ってそれが永劫に残るメモリアルな物では無く、ある日ふと飽きたと思った瞬間には無意味な物に転じる物だ。
とは言え趣味なんて物の多くはそんなものだろう。
刹那的であるからこそ刺激があるからして。
サブカル。
サブなカルチャー。
カルチャーは文化。
つまり絶対に本筋になれない脇役的な、或いは隙間的な物がサブカルだ。
そのあまりのどうでもよさが俺は好きだと思っている。
平面に描かれた美少女を眺め、まるで自分がその中の登場人物の様になったと夢想する。
本当に無意味だけれど、少なくとも垂れ流す時間だけは満たされている。
そんな断片は俺の部屋を埋め尽くし、他人が見たら気味悪く思うだろう。
気持ちが悪い、そう言うかもしれない。
だがしかし、絶対に他人に公開しないからこそここは俺の聖域であり、唯一自分が呼吸をして生きているのだと実感出来る倒錯した空間だ。
ある日仕事に行き、総務で内勤をしている割と可愛い容姿の女子職員と話す。
内容は年末年始に連休をとる為の有給休暇の申請だ。
割と胸元の開いたデザインのわが社の制服。
彼女は俺の差し出した書類に不備が無いかを確認するために俯く様な姿勢で下を向く。
すると彼女の制服に包まれた豊満な胸は下着で拘束しているとはいえ、重力に従う。
俺は何の気なしに彼女の胸元を見れば、なんとブラウスの隙間から柔らかそうな谷間が見えるではないか。
だがしかし俺は彼女の鎖骨のくぼみ辺りに視線を移す。
そこには特徴的な黒子があり、哀しい事に産毛と言うには妙にメラニン色素の濃い体毛が一本伸びているのだ。
俺は思うのだ。ああ、煽情的な彼女の女性的な魅力。
だが結局はその黒子と言う一点で台無しではないかと。
これは暴論だ。極論であり俺と言う一方通行な主観に過ぎない。
けれどもピンストライプの入ったグレーでタイトな俺のブッルックス・ブラザーズで購入したスーツ。
その内ポケットには俺が密かに忍ばせてあるとあるフィギュアがある。
それは小学五年生くらいの美少女で、実は魔法少女なのだ。
これのどこが小学生なのかというプロポーションを包む、何故か煽情的な色気のあるコスチューム。
だがしかし彼女は無邪気な微笑みを浮かべており、まるで天使だ。
彼女には黒子もなければムダ毛も無い。
俺はそれを密かにジャケットの上から撫で、不備をチェックする彼女に向かって言うのだ。
勿論それは心の中であるが……君は残念ながら穢れているのだよ、と。
俺は、いや私は心の底から紳士であり、天使である魔法少女に不埒な思いは抱かない。
ただ在るがままを愛でるだけだ。
そう、君の様なババアなどお呼びじゃないのだよ、と総務の彼女に密かな悪態をつきつつ。
そんな紳士である私は、休日の午後、ネットをぼんやりと眺めていた。
そこはソーシャルなアプリケーションを介したリアルタイムのコミュニケーションが当たり前の現代で、何故か前時代的な自分でリロードをするタイプのテキストによるチャット部屋だ。
ここには私の様な紳士が集まる社交場だ。
それぞれの志向から思考される至高の想いをぶちまける場である。
ここでは時折考えの相違から、小さな戦争が起きたりもする。
だがしかし小さな少女を愛するという一点において繋がっている我々は、やがて思いのたけを全て吐きだした後、ノーサイドの精神で分かりあうのだ。
その日の議題は昨今のライトノベルやノンプロの創作小説などで話題になっている異世界への転生についての話だった。
ある日なんらかの理由で主人公は死に、その結果神や仏めいた超越者に誘われ、彼らは本来持ちえない強大な能力と共に異世界に向かう。
それは焼きたてのデニッシュにソフトクリームと大量のメイプルシロップをぶっかけ、さらには粉砂糖までトッピングしたスイーツよりも主人公に甘いご都合主義のストーリーだとしてもいいのだ。
問題は自分がもしその立場ならば、紳士として何をすべきなのかって事なのだから。
主人公が何をしてもいい。
魔王を倒してお姫様に好かれてもいいし、奴隷を買い漁り小さなヒーローでドヤ顔をしたっていい。
逆にそれをしなくたっていいのだ。
何せ世界は自由なのだから。
ところがこの社交場にデビューして間もない紳士見習いA氏がこんな事を言った。
やあロリ奴隷を買い漁ってリョナ経由の孕みックスでもしたいな、と。
何たる冒涜であろうか。
ただちに社交場は血みどろの最前線に早変わりだ。
我々は紳士だ。紳士はすべての少女に救いをもたらすべき大人なのだ。
リョナなどタブーどころの話じゃない。
紳士どころか人間のクズである。
なるほど、紳士の皮を被った部外者が我々の対立を煽る為に潜り込んできた様だ。
どれほど無限にある性癖だとて、少女を汚す行為は慎まれるべきというのは暗黙の了解だ。
故に我々は憤りを露わにしたのだ。
私はキーボードを叩きつけるように打ち込んだ。
どんな世界だって、どんな相手だって、それが少女では無い女性であっても、紳士であるなら全て救って見せるさ! ってね。
きっと紳士の円卓にいる諸君は画面の向こうでスタンディングオベーションをしている事だろう。
だがしかし、誰からの返答も無い。
その対立を煽る不届き者からすらも。
首を傾げる私だったが、その時画面が勝手にリロードされ、たった一行の言葉が現れたのだ。
『なら救って見せて欲しい。紳士たるキミにはその資格があるよ』
当たり前だ! とディスプレイの前で声を張り上げ拳を突き上げた私だ。
その姿勢はそう、我が生涯に一片の悔いなしと天に拳を向けた拳王のよう。
だが次の瞬間、私はどこか見知らぬ空間にいた。
どこか現実であって現実では無い場所だ。
自分がいる場所は何やら高い塔の上の広間だ。
見れば世界の果てまで見渡せる様な絶景。
下を見れば色とりどりの花が咲き乱れており、高い所が苦手な私でも、暫く下を見続ける程の絵画の様な景色。
言うなれば想像しうる最高の理想郷ではないか。
私はその花園に立ち、無垢な少女が花と戯れるのを眺める。
なんて素敵なのだろう。
ここにいれば世界すら無垢であり、最早衣服など纏う事すら不要だ。
理想郷に不純物などいらないのだから。
さあ少女よ、そんな物、取り去ってしまおうじゃないか……。
そんな妄想に嵌っている私に、誰かが声をかけてきた。
見ると白髪の青年だった。
彼は酷く女性的な印象のある青年で、白いローブの様な物を纏い、宝石の様な大きな石のついた長い杖を手にしている。
彼は酷く柔和な微笑みで私を見ると、どこかえなりかずきみたいな鼻声で言ったのだ。
君が言ったどんな女性でも救うという言葉、それをしてもらおう、と。
何を言ってんだお前……思わず紳士言葉が崩れてしまう程に目の前の青年の言葉にイラっとした。
なんだろう、彼は一般的には人間離れした美青年なのだろう。
だが何故だか分からないが、生理的に腹が立ってしまう様な雰囲気がある。
彼はさらに続けた。私は人間が好きなのだと。
だから不幸な彼女をどうか救ってほしいと。
なるほど、分からん。
私がそう言うと、彼は私を見て微笑みこう言った。
とある王の話をしよう、と。
何故だろうか、さらに私はイラついた。
私は表情に明らかな嫌悪感を滲ませながらそれは遠慮するとキッパリと言った。
紳士たるもの、いかなる時もNOと言える人間たれと誰かが言っていたしな。
信念は曲げちゃあいけない。
するとどうだ、彼は困惑し、そして焦りだした。
あれおかしいな、これで大概の人間は釣られたのに……。
いっそ女の子の姿で来るべきだったか……? などと呟く。
これは紳士たる私への挑戦とみていいのではないだろうか?
よろしい、ならば闘争だ。
実際私は無意識のうちに身体を最大限に捻り、後は拳を繰り出せば彼の顔面に吸い込まれるだろうと言う準備を始めていた。
そうまるでステゴロの天才、花山薫の様に。私には彼の様な体重は無いがスピードには中々自信があるのだ。
こんな訳の分からない場所に攫っただろう目の前の優男に鉄拳制裁を加えてやるのだ。
すると彼は狼狽しながら話を進めさせてくれと遮った。
暴力はいけないと諭す様に言いながら。
仕方ないがその後話を聞くと、どうやら彼はイケメンのえなりかずきめいた声の超越者的な存在らしい。
魔術師とか言う職業でもあると。
なるほど魔術師か。ならせめてあの偉大なマギー司朗の様なユーモアを見せて欲しい物だ。
そして人類はとても脅威に瀕しており、彼は大好きな人間が滅ぶことが忍びないから陰ながら手助けをしたいのだという。
いかん、これはとてもヤバい。
これはもしや、世間でよく言われる意識高い系なのか?
意識高い系と中二病があわさり最弱に見える。
例の社交場にもここまで酷いのはいないぞ?
何というか私は色々な部分がぶっとび過ぎてて形容しがたい気分になった。
こいつ逆にすげえな……的な意味で。
彼はもしかしたら疲れているのかな? そう思い、私は出来るだけ慈愛の表情で彼の肩を叩いた。
やあ君、少し休んだ方がいいんじゃないかな? ってね。
そしたら彼は突然憤慨し、「ええいもう面倒臭い、もうキミには向こうに行ってもらう」と叫びながら、その杖を棍棒めいた勢いで私の頭を殴ったのだ。
殴る? いや違う。在りし日のランディバースの様な豪快なフルスイングで彼は私ごと塔の外へ向かって飛ばしたのだ。
もういいから行ってくるんだ、頑張ってくれたまえ。君には素質があるからって笑いながら。
そのままコミカルな漫画の様に、花園の上空をどこかにすっ飛ぶ私であった。
そしてもし機会があるのなら、絶対あの野郎だけはボッコボコにしてやると密かに決意する私であった。
温厚な私であるが、長くは無い私の生涯で一番激怒したのはこの時だった様に思う。
それにしても綺麗な花園だったなあ。
☆
「先輩! ここにいらっしゃったんですか? 一緒にご飯を食べにいきましょう」
なるほど、どうやら私はもう先輩と言う名称で固定されているらしい。
どうも慣れないが、彼女はそう呼びたいらしい。
そもそも彼女とは付き合いが殆どないのだ。
それでも何というか、今の私の本名らしい藤丸立夏と呼ばれるよりはマシだからいいのだが。
何かこう所謂キラキラネームめいたニュアンスで嫌なのだ。
あの白いローブの魔術師。えなりかずきめいた声のイケメンに殴られあの花園からフライアウェイした私は、そのまま意識を失った。
それはそうだ。飛び降り自殺を行う人間の大半はその途中で気を失うとか聞いた事があるが、私の場合はどこに落ちようと即死確定な上空を滑空していたのだから。
その後気が付いた時に既に、私は赤子になっていた。
それも何と言うか出産前というか、臨月の胎児として。
その暖かな羊水の中で揺蕩いながら、外から聞こえるエコーのかかった母親らしき女の声を聞いていた。
もうね、心地よすぎて産まれたく無かった程に素敵な場所だったな。
でも結局は産み落とされ、私は藤丸立夏になったのだ。
名前からして前の生涯と同じ日本人で安心した物だ。
その後は特に珍しい事は何もなく、当たり前に義務教育を終え、大学進学を控えていた。
前世の記憶があると言う事は中々に有利で、前が理系の大学に通っていた事もあり、受験などは特に苦労せずに終えられた私である。
ここまではまあいい。だがしかし、藤丸立夏となった私には問題が2つ程あるのだ。
そしてそれは中々に厄介で、私の意思ではどうにもならない事柄なのだ。
まず一つ目。私と言う藤丸立夏は女である。
もう一度言う。私は女だ。
勘弁してほしい本当に。
少女が大好きな私が、女性として少女を愛するなんて業が深いににも程があろう。
だいたい30年からの時間を、私は男として過ごしてきたのだ。
今日から君は女だと言われようと、じゃあ心も女になりますとか無理である。
よくその手のトランスセクシャルなラノベや異世界小説的なのを読んだことがあるが、魂は身体に引きずられるなんて常套句を理由にアジャストしたりするが、ふざけるなと言いたい。
どう足掻いても心は男なのだ。
分かるだろうか? 私である藤丸立夏は自分で言うのもなんだが、日本人離れした美人だ。
そこに愛嬌と言うか、ビューティフォーにキュートが混ざった愛され系女子なのだ。
そんな私が中学高校と進学する中で、月一程度で男子に告白をされる気持ちを。
元々の私は男性であるからして、男性の視線がどこを向いているかを女性以上に理解している。
ああこいつ、私の豊満な胸を見てやがる。いや待てよ、そのままうなじ経由で鎖骨をチェックしているぞ? なるほどこいつはお目が高い……そんな感じで。
でも私は男なのだ。確実にセックスの対象として見られつつ、君が好きだ付き合ってほしい等と言われる訳だ。
そんな誘いにホイホイ乗ればどうだ。
それほど時間も経たずに私はその男に美味しく頂かれるに決まっている。
勘弁してくれ。私は凹凸の少ない桃色の丘が好きで、くびれのほとんどない腰つきを愛しているのだ。
いや最初は少しばかり愉しかった。
それはそうだろう。幼稚園児や小学校低学年の自分を姿見で見ればそこはパラダイスなのだから。
だがしかし、中学にもなりババアの階段を上り始めた私は皮肉にもどんどんセックスアピールの強い肉体になっていくではないか!
しかもだ、ブラジャーなどと言う面倒臭い下着を毎日するのも腹が立つのだ。
面倒だからつけなきゃいいやなんて最初は思った。
だが少し走ったくらいでもこの脂肪の塊は上下し、先端は擦れて痛くなる。
本当に辛いのだ。故に母親から習った腋の下から肉を集めるように胸をカップに収める、これで貴方も美
乳の持ち主、目指せ愛され女子! 法を習得したのだ。
というか私の母親はどんな雑誌を見てそのネタを仕入れたのか。これが分からない。
なんだかすぐ騙されそうで心配になるな。
母親も私の遺伝子の大元であるからして美人さんであるし。
まあいい。そう言う風に女性になった苦労は日々続くわけだ。
さてこれは前座に過ぎない。
問題は2つ目なのだ。
大学への入学を控えた春のある日。
私は衣替えをしようと新宿にあるとあるデパートに向かっていた。
渋谷じゃない所が私の少しばかりの抵抗と言うか、いかにも女の子ですアピールをしているデザインなど着てたまるかみたいな反逆だ。
年齢層を20代後半くらいをターゲットにしている落ち着いた感じの服を求めていた。
下着などはもう少女趣味の母親がいつの間にか買ってきた物を渋々身に着けているが、せめて服くらいは自分で選びたい。
というかスポーツブラと縞パンで済む体型に産まれたかったなぁ……。
で、実際にデパートで手早く服を買いそろえた私は、休憩がてら地下にあるカフェに向かった。
よくあるシアトル系のやつだ。ここは喫煙が出来るから重宝する。
東京で暮らしながら喫煙者をやるって言うのは、繁華街に出向いた時に喫煙可の店を把握していないと辛いからね。
とは言えヘビースモーカーになると自慢のオレンジ色の髪が臭くなるので、メンソールの電子煙草だが。
ニコチン目的と言うよりは、あのメンソールの独特なアタックが好きで吸っている。
まあいい。で、休憩をしようとそのカフェニに向かった私だが、その目的地の手前に、見慣れぬブースがあるのに気が付いた。
そのブースは献血を募る目的らしく、背後のパーティションで仕切られた場所には献血にしては妙にラグジュアリー感のある高そうなリクライニングチェアーが何脚か並んでいる。
血が足りていません、貴方のご協力をお待ちしていますとブース前で呼びかけをしている職員は、白衣を纏った外国の血が入っているだろう女性だ。
そのイントネーションを聞けば、普段は英語を公用語にしているのが分かる。
まあすらりとした美人であり、私には何の興味も惹かれないが。
私はふと彼女と視線があった事に気が付く。
その結果、特に考えもせずに献血をする事に決めた。
なぜそうしたか、その理由を強いて言うなら、身体が若干重く感じたからだ。
この感じだとあと数日以内に月経が訪れるだろう。
流石に17年間も女をやっているとそれくらいは分かる。
だから献血をして少し血を抜けば気分が晴れるかも? 私はそう無意識に思ったのだ。
で、献血の職員の女性は、私から血を抜きながら、どうせなら肝炎やエイズの検査もできるのでしませんか? と言う。
ならやってくださいと私は言った。
エイズになる様な覚えはないが、肝炎などは幼少時の病院治療などで知らない間になっているなんて事もあるから、なら調べて貰おうと思ったのだ。まあ無料だしね。
するとだ。私から400mlの血液を抜いた彼女がその血液をバックヤードに持っていくと、暫くして何やらざわざわと煩くなった。
一体何だろう? と私は不安になってしまった。
それはそうだろう。肝炎などの検査をしてもらっているのにざわついていたなら、もしかして?! ってなるに決まっている。
その結果どうなったか。
それはあれよあれよと言ううちに、私は海外留学と言う名目でスイスを目指す事になった。
なんでも、マスター……? とか言う適性が私にあり、国連主導で行っている慈善事業に是非参加してほしいと言われたのだ。
もちろん私は断った。即答で。
何故なら既に進路は決まっていたし、私はそこで保母と幼稚園教諭の資格を取って自分で幼稚園を開園するのが夢なのだから。
何が悲しくて慈善事業に勤しまなければならないのだ。
そう言うのは好きな人間がやればいいじゃないか。私はただの小市民だぞ。
でも私の意思とは関係なく、気が付けばドゴール空港行きのファーストクラスに私はいた。
両親は世界平和の為の国連主導の慈善事業に私が行くと聞いてもろ手を挙げて賛成したらしい。
職員を介して私が心からそれを望んでいると聞いたらしいし。
立夏ちゃん、頑張ってね……!! 別れ際、母親は涙ながらにそう言った。
私、一言も言ってないんだけどなぁ……。
その職員曰く、3年の任期が終われば大学の卒業資格もくれると言う。
なんかもう疲れた私はまあいいかと流された。
その結果やってきたのはスイスどころか、ここは一体どこなんだという僻地の雪山にあるカルデアとか言う秘密組織に連れてこられたのだ。
聞けば世界の未来を守るための組織だといい、地球儀のおばけみたいな機械を前に演説をする典型的なツンデレ女がいた。
私はここに連れてこられてからそれほど経ってないのに、何とかという実験が云々的なアレで、今朝からこの不気味なホールに集められたのだ。
中にはびっしりと外人が席についており、その末席に場違い感を感じつつも私は座る。
ツンデレ女は何やら楽しそうに叫んでいるが、こっちは何を言っているかさっぱりわからない。
いや外国語はやってたから英語は聞き取れるんだ。けど固有名詞が多すぎて理解できないの。
そんな私がこいつ何言ってんだと思って不貞腐れていると、アンタは不真面目だから出て行きなさいとツンデレに追い出された。
広い廊下にポツンと私。
慌てて追いかけてきた私を何故か先輩と呼ぶマシュが慰めてくれた。
先輩が頑張っているのはわたし知ってますって頭を撫でてくれるのだ。
マシュはここに連れてこられ、後は勝手にどうぞと入口に放置され、なんかこう変なシュミレーターで意識を飛ばされた私が廊下で寝ていたのを起こしてくれた少女だ。
控えめにいって天使である。
彼女は多分、13、4歳くらいの姿をしているが、ああもうこれはババアですね……と最初は思ったが、見れば産毛の様な薄い体毛が無かったので全て許した。
その後は何かにつけて懐いてくる犬の様に私に構ってくる。
ああ私の部屋だと案内された部屋を占拠していた桃色の髪の男はどうでもいい。
ピンクは淫乱って昔から言われているから。
関わらない方がいいに決まっている。
まあマシュはふわふわだからやぶさかでは無いのだが。
そんなマシュに廊下で慰められていた私だが、なんだかふつふつと怒りが沸いてきた。
あのえなりかずき声の魔術師のせいでこんな目に遭った私だ。
その後どうにか持ち直し、これから大学へ進学し、自分の幼稚園を作ると言う野望に燃えていた私を、こんな理不尽な目に合わせたのは誰だ。
それはここの所長だと宣うあのツンデレのせいじゃないか。
なのに不真面目だから出て行けだあ?
こっちは何の説明も無いって言うのに。
もう色々と限界に来ていた私は、私の他に47人いるマスター候補が連ねるさっきの部屋に戻り、やい所長こっちに来やがれと部屋の外に引きずり出した。
他の連中は映画のエイリアンで主人公たちが冷凍睡眠してた箱みたいなのに入ってる様で見えなくなっていたが。
な、なによ貴方はと強がる所長。
でも声は震えている。
マシュは気を利かせたのか、ざわつく会場に戻り時間を引き延ばしている。
ナイス後輩。
で私は言ってやったんだ。どうしてここに私が来たかの全てを。
それをお前は不真面目となじるかと襟首掴んで問えば、涙目でごめんなさいと言う。
なら許してやろう寛大な心で、と思った瞬間、さっきいた部屋が吹き飛んだ。
それこそ文字通り。物理的に。爆破テロ的に。
分厚い隔壁の外にいたから私たちは助かったが、怖い怖いと泣きながら足に縋りつく所長をどかし、私は部屋に急いだ。
あそこにはマシュがいる。あんな無垢で可愛らしい娘がテロに遭うとか許せないだろ。
マシュはいた。
哀しい事に下半身が瓦礫の下に挟まっているが。
もう諦めたように手を握ってください先輩とマシュは弱々しく言った。
私が所長に詰め寄らなきゃ彼女は私と一緒に助かっていたのに。
他の有象無象はどうでもいい。だって話した事すらないのだから。
けどマシュは何故か気になるのだ。
ここで失くしてはいけないのだって。
その心の声があのいけ好かない魔術師の女の子を救えと言う言葉にリンクしてイラっとしたが。
でも状況は絶望的だ。なんかデカい地球儀も真っ赤にそまって警告しますとか言ってるが煩いよ。
こっちはもうどうにもならない程に追い込まれているんだ。
警告するならもっと早く言えよおバカ。
結局私はマシュの手を握り、なんかもう疲れたから一緒に死んでやるかくらいに思った。
でも結果は死ぬことは無く、冬木市とか言う火災でどえらい事になっている街に立っていた私だ。
そしてもう手遅れだったはずのマシュは、近未来的なスクール水着に鎧っぽい外装をつけた姿で私のサーヴァントになったと言うのだ。
で、その後色々あったが、青髪のローブのニーチャンに誘われ、這う這うの体で洞窟めいたとこまで来ると、マシュとニーチャンが協力しつつ全身黒の趣味の悪い姿のセイバーとか言うのを倒した。
因みにその青髪ニーチャンがしきりに私の豊満な胸と盛り上がった尻を撫でてくるのでグーで殴ってやった。
勘ちがいするな、私は触る側であり、触られる側では無いのだ。
まあとにかくそのセイバーとか言う女を倒した事で、何とか元の場所に戻れるらしい。
そう言えば戻り際、所長の脇に立っていた影の薄い男が現れ、何やら顔芸を披露していた。
なぜオルガマリーがいないのかって狼狽しつつ。
知らんがな。誰だよオルガマリーって。
するとマシュが所長の事ですよって教えてくれた。
オルガスムスみたいで卑猥な名前だなとか思ったが言わない方がいいだろう。
まあその所長なら向こうにいるんじゃないか?
そう言うと顔芸が凄い怒ってた。お前のせいだ的な。計画が狂う的な。
だから知らんって。
イラっとした私は青髪にまたアレをやったってとお願いした。
アンサズアンサズ、ボカーンボカーン的な。
涙目の影が薄い男はそのまま燃えて消えていった。
ざまあみろ。お前のせいで秘密基地がボロボロだよ。
マシュは何とか助かったけど、あそこにいた殆ど死んでたぞ。
まあとにかくそうして、私はカルデアに戻ったのだ。
去り際に青髪が今度はランサーで呼んでくれよなって尻を撫でてきた。
今度は目をついてやろうかと思ったら金色に光って消えやがった。
つまり2つ目の問題点とは、なし崩しのまま私はオカルトの世界に足を踏み入れ、その中心人物になってしまったと言う事だ。
カルデアに戻った私を迎えた所長ことオルガマリーさん。
あの影が薄い男が死んで狼狽してたけど、あいつがテロの犯人だよって教えたらガン泣きしてた。
その後まあ、言い方が悪かったなと反省し、頭を撫でてやってたら懐かれた。
お前コミュ症かよってレベルでちょろいな。
で、結局、私以外のマスター候補が死んだり瀕死だったりで使い物にならず、結果的にカルデア唯一のアマスターになったのだ。
逃げればいい? 無理無理。
あの地球儀が赤くなったせいで、この場所以外は消えてなくなったんだってさ。
なので地球儀の中の過去の時代に戻ってその原因を無くさなきゃダメなんだって。
ならやるしかないでしょ。他に人がいないんだから。
そこから半年近く、何度も酷い目に遭いながらもなんとか特異点を4つ修復した私である。
とは言えこれでやっと折り返し。
この修羅場が同じだけまだ続くのだ。
まあいくつか嬉しい出来事はあるがそれはまた別の機会にでも。
私は右手に腕を絡めてくるマシュと食堂に向かうのであった。
このままのマシュでいつまでもいて欲しい、そう思いながら。
ああ、故郷の母親の煮物が恋しい。
最近はそればっかり考えている私である。