朧月夜のとりあえずヤってみよう

版権作品の二次創作がメイン。小説サイトに投稿するまでもない作品をチラ裏感覚で投稿します。

TSして藤丸立夏になった男だが、好き勝手にやってたら某ぐだ子みたいになってた件2

FGO二次を書くにあたって、イベント系の特異点は書きたくないなぁと思ったので、メインストーリーのみで書いてます。
TSってなんすかね。小説って恋愛書かないとダメなんすかね?
その辺もモヤっとしているので恋愛描写はあらかた廃除して書いていきます。



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「先輩、これはどちらに運べばいいのでしょう?」
「んん? じゃそれはロマン達の所に持っていってあげて」
「了解しました!」
「良い子だ。届けたら一緒に食べようね」
「はいっ!」


 昼下がり。昼下がり?
 現在時刻を示すデジタル表示はPM14:00を過ぎた所だから間違っていない。
 レイシフトの繰り返しで精神的にも肉体的にも疲れた私は、ダ・ヴィンチ女史経由で所長代行のロマンに休暇を申し出た。
 その結果が今であり、お好み焼きと焼きそばと言う、関西では定番の二大粉モンを作っていたのである。


 マシュには管制室で計器に張り付いている職員たちの分を持っていってもらった。
 ちなみにカルデアの食堂は同時に100人くらいは食事がとれる規模の広さがあるが、例の爆破テロのせいで職員の殆どがやられ、五体満足で動けるのは20人超しかない。
 なので厨房で器用にコテを操りお好みを返すエミヤと、その横の鉄板で焼きそばの面倒を見る私以外誰もいない。
 閑散としすぎててホラーだよ。
 あ、横にいるエミヤもおばけみたいなもんだからそっちもホラーだ。


 特異点と言うカルデアスの中の病気の原因みたいな場所。
 そこにエミヤみたいなサーヴァントを連れて赴き、大概は悪さをしているやつをとっちめるのがマスターのお仕事だ。
 ある特異点では聖女ジャンヌと旅をしてたら黒いジャンヌとデカい竜に襲われて酷い目に遭った。
 また別の特異点ではほとんど海の上で船移動だと言うのに、歴史に疎い私でも知っているヘラクレスに殺されそうになった。


 なんなのコレ。完全にブラック過ぎるでしょう?
 私ってばあれやってこれやってと喚いているだけで、実際はマシュが盾で壁になって貰わなきゃ死んでるからね。
 一応充足感はあるよ。お前が頑張ったから世界はまだ存続できてるんだ的な意味で。


 でもね? 特異点にレイシフトする時って、コフィンって言うカプセルの中に寝かされる訳さ。
 あれだよ。映画のエイリアンとかで冷凍睡眠してるアレみたいなの。
 仕組みなんか分からないしそれを知ってどうなるでも無いから聞きゃしないけれど、寝ててもしっかり現実感はあるのよ。
 エミヤたちが何度死のうが暫くすると復活出来るけどさ、私とマシュはレイシフト先で死んだら終わりなのよね。


 それって凄いストレスでさ。
 例えば行った先で石に蹴躓いて転んで膝に擦り傷を負ったとする。
 そうなるともう駄目。不安でいても経ってもいられないからイライラもするし、泣きたくもなる。
 だって竜だの触手の怪物とか普通に出てくるんだよ?
 変な毒でも喰らったらどうするのさ。


 でもほら、マシュなんか話を色々聞いてくうちに、ちょっと洒落にならない出自な訳。
 なんだろう、レイシフトから戻るとたまに貧血で倒れたり鼻血を出したりするのさ。
 おかしいんだよね大体。
 レイシフトした世界は現実と変わらないから、ロンドンの特異点の時に隠れ家にしていた家に風呂があった。


 丁度その時はタイミングが悪くて、私は生理になった。
 しかも妙に重くて頭痛と吐き気も凄いし。
 で、風呂があるから浸かれば楽になるかもと思った。
 通信先でロマンもそうした方がいいって言うし。
 一応ダ・ヴィンチ女史謹製の鎮痛剤を送って貰ったけど、まあ風呂に入ろうとなった。


 そんな私を真っ青な顔でマシュが心配する訳。
 まあ毎月の事だし? 中が男だろうがもう慣れるしか無いわな。
 しんどいのは変わらないけれど、結局は鎮痛剤のんで大人しくしとく以外無いのも事実。
 でもマシュは過剰に心配しすぎというか、多分マスターである私がいなくなるのをとても怖がっている。


 だから大丈夫だよと言いつつも納得しないマシュに一緒に風呂に入ろうと誘った。
 さりげなくついて来たクー・フーリンをエミヤが殴って止めてたのは笑ったけれど。
 そして猫足の西洋風バスタブに湯を張り、そこにマシュと入った。


 マシュは私よりも大きい胸で、細身だけどグラマラスな肉体だ。
 初めて入るお風呂にマシュは恐々としながらも、どこかわくわくしてるように見えた。
 カルデアにバスタブは無いからなあ。資源を無駄遣いしない様にシャワーしかない。
 身長は私もマシュも小柄な方だから、向かい合って浸かると狭くも無くて丁度いい。


 私は腹痛が少し和らいだ気がして余裕が産まれた。
 だから何となく私をじっと見ているマシュの髪をかき分けていつも隠れている片目を露出させる。
 両手で彼女の頬を包み、まじまじと見てみるのだ。
 彼女の瞳は大きく、虹彩の色は薄紫と青の間。淡い中間色だ。


 肌は白磁の様に白くて、だから私がじっと観察すると恥ずかしいのか肌に赤みがさす。
 乳房もウエストも、多分女性的な部分はとても女性らしい。
 言ってしまえば女性視点を持つ今の私から見ても、なるほど女性の理想を集めた様な姿だと思う。


 私はマシュの頬から首筋、鎖骨と指で撫で、胸の谷間を下る。
 くすぐったそうに身をすくめて笑うマシュ。
 可愛らしいのだけれども、だからと言って何か邪な気分になる事も無い。
 なんだろうね、女性になっても女性が愛しいと思う気持ちはある。
 絶対に男にときめくなんて一生無いと思うわ。
 その代り、なんだろう性欲が一切無い。


 男なら分かりやすい。
 性的に欲情したなら、ズボンの中で痛いくらいに勃起するのだから。
 でも女性ないま、分かりやすい現象が無い。
 今年で18年になる自分の新たな人生で、例えば中学や高校の時に、妙に火照る時があった。
 それこそ生理前後のホルモンの関係もあったんだろう。


 本来神秘の対象で、容易に触れたり出来ない女性の肉体。
 それが今は自分自身なもんだから、昔は興味本位に自慰をしてみた。
 男性の肉体よりもずっと、快感を得られる場所も多い事に改めて驚いた。
 興奮すれば乳頭も陰核も痛いほどに腫れるし、下着が意味をなさない程に湿る。


 ただし、やはりそれは自分の肉体に過ぎず、興味が満たされるともう駄目だった。
 なんだろう、快感のあまり思わず漏れた自分の嬌声を聞き、ああ自分は女だったと再自覚すると一気に冷めるのだ。
 なので達するまでが出来ない。


 じゃ男に抱かれればいいのか?
 それも違うと断言できる。
 精神的に受け入れられない。


 だからこそマシュの身体を撫でても綺麗だと思っても、それで終わる。
 いやむしろ、これは愛撫では無く確認なのだ。
 以前から考えていた。
 何故マシュは汗臭くないのだろう?
 何故マシュは色素が薄いのにアルビノの特徴が無いのだろう?
 そしてレイシフトから戻るたびに、調整と言う名の診療をロマンから受ける。
 おかしいよね。


 私は多分、相当に疑心暗鬼になっているのだ。
 あのいずれぶん殴ってやると決めた白いえなりかずきめいた声の男にここへ送られてから、ずっと疑念を持ち続けてきた。
 その猜疑心が自分の心を一気にこの肉体に魂を定着させた気がする。


 あれだけ嫌っていた藤丸立夏って名前も自然と受け入れられたのはここに来てからだ。
 それは時折混じる自分では無い様な思考が昔はあったのに、現在はそれを感じないからだ。
 多分その声と私の思考はいよいよ持って同調したのだと思う。
 それはマシュと言う存在に対して感じる思いのせいじゃないのかなと。


 彼女は事あるごとに先輩のサーヴァントと言う言葉を使う。
 それは変わらない事実であるのに。
 言わなくても良い事を、ことさら声高に宣言するのだ。
 それは自分自身への確認にも思えるし、少しずつ数を増した私のサーヴァント達の中で、自分は藤丸立夏のモノなのだと主張する、ある種のマーキングにも思える。


 でも、私が彼女と出会ったのはほんの半年前に過ぎない。
 シュミレーターで酔って気を失った私が廊下で倒れていたのを彼女が見つけたのが最初だ。
 その時から彼女は私を先輩と呼び、理由を聞けばここの誰よりも人間らしいからだなのだと非常に抽象的で哲学的な言葉を吐いた。


 ただその後の触れ合いの中で、彼女は年相応の少女である姿を私に見せた。
 だからこそ庇護欲が生まれ、ことさら私は彼女を気にした。
 それでもただ生理痛に苛まれただけでここまで取り乱すのは解せない。


 彼女が求めている人間的絆は、多分私が考えている物と相当に剥離しているんだろう。
 マシュはよく私に接触を求めるが、そこにあるのは愛情であっても、きっと子が親に求める無意識の物に近いんじゃないのだろうか?
 彼女はいつだか言っていた。わたしはカルデアの外を知らないと。
 だからレイシフト先に行くと、彼女は空を見上げている。
 あの忌々しい輪のある青空を。


 マシュは中学生、或いは高校に入学した程度の見た目だ。
 勿論発育が良すぎる部分はあるにせよ。
 それは精神年齢を加味した上での私の主観だ。


 ならば、その年代でここまで人に依存を求める事ってあるのだろうか?
 カルデアから出た事が無い、このワードに込められている意味。
 それはとても私じゃ理解できない何かが孕んでいる様に思う。


 私はバスタブに揺蕩うマシュの胸を撫でる。
 桃色の先はふにゃりとしているが、私の爪先で軽くこするとマシュは驚いた様な表情になり、そしてマシュ自身が知らなかっただろう声を漏らした。
 そして混乱した様に目を泳がせる。


 これは愛撫だ。そこが気持ちいいと感じる事を分かって私はそうした。
 だからマシュは当然の反応を見せたに過ぎない。
 柔らかかった先は、今はもうかちかちに張っている。
 私は戸惑うマシュの手をとり、そこに導く。
 ほら硬くなっているでしょう? そう教える。


 先輩恥ずかしいです、と消え入る様な声のマシュ。
 でもね、いくら奥手だろうがこんな事も知らないのはおかしいんだよマシュ。
 それは君がどれだけ純粋培養だったのかって言ってるのと同じなんだよ。


 私はどういう表情をしていいか分からずに混乱するマシュを抱き寄せ、母親が子供にする様にぽんぽんと頭を撫で叩く。
 彼女はほにゃりと表情を緩め、先輩暖かいですと私に体重を掛けたのだ。


 ごめんねマシュ。これはきっとただの八つ当たりなんだよ。
 正直に言うと、世界が滅びた所でどうも感じないのだ。
 宇宙で新たな星が産まれたとしても、いつか滅びるのは決まっているのだ。
 それはただの真理で節理だろう。


 あのオリオン座の真っ赤な星。ベテルギウス。
 何故赤いかと言えば、それは星の寿命が進み膨張しているかららしい。
 その末路はビックバンと言う名の爆発と崩壊。
 そこに新たな宇宙が産まれる。


 元の世界だって人間は自然を食いつぶしていた。
 便利だからと言う理由で、まるで貯金を食いつぶす様に自然を壊して生きていた。
 だからあと数百年もしないうちに、きっと人間以外の生物だけが地上に住んでいたと思う。


 快適なのも便利なのも否定はしないし、むしろないと困るよ。
 でもそれとここの話は同列には語れない。
 それは分かっている。
 だけど、顔も知らない誰かの為に一生懸命にはなれないんだよ。


 爆破テロを起こしたレフ教授も、この前出てきたソロモンも。
 よく分からないけれど、ああ言った連中がこの状況を作っているらしい。
 なんだろう、よくある悪の組織みたいな。
 存在そのものがギャグみたいだよね。


 奴らがこの狂った世界を望んだからこうなっている。
 で、私と言えば対抗できる存在である英霊を束ねるマスターだ。
 大義も大いにあるでしょうね。
 でも何故私がマスターかと言えば、私以外の資格者が死んだからだ。


 ロマンは何度か私に確認をする様に「立夏ちゃん、いいんだね?」と言った。
 何が良いんだろう? やるしかないからやってるだけだよ。
 死にたくないからそうするの。
 でもね、何回レイシフト先でパンツを取り換えたと思う?


 尿をちびったレベルじゃないよ。
 怖すぎて脱糞したんだよ?
 恥ずかしいなんて思わないわ。
 だってマシュが血を流したり、エミヤの剣で裂かれて敵の首が飛んだりしてるんだもの目の前で。
 たかが脱糞したって洗えば済むでしょう?
 問題はそんな狂った状況にいながらも、またそこに行かなきゃいけないと言う事実なんだよ。


 そう言う想いが積み重なって、私はこれではマズいと思ってロマンに我儘を言ったんだ。
 これじゃ確実に壊れる自信があるもの。
 ロマンは難色を示した。
 彼は優しいよ。でも、レフ教授に裏切られて使い物にならなくなった所長の代行としての責任がある。
 だから半日なら何とかするって笑ったんだ。
 横で私の表情が歪んだのが気が付いたんだろう。
 ダ・ヴィンチ女史がロマンって声を掛けたけど。


 でもロマンが笑った事が引金になったんだ。
 何笑ってんだお前って。
 私は号泣しながら叫んだ。
 周囲の職員もみんなこっちを見ている。
 でも止まらなかった。


 世界なんか滅びたっていいよって。
 どこにゴールがあるの?
 なんで普通に私を前線におくれる訳?
 そうだよね、私しかいないからそうするんだよね。
 分かるよ、でも元々自分はそうなる為にここに来たんじゃないんだよ?


 レイシフト先で私は何人も殺しているんだよ。
 英霊に命じようが、吐き気がするんだよ?
 歴史が修正されて、この気分は消えるのか?
 お前らそのハイテクで私の主観で追体験してみろよ!


 多分私はそんな事を全部ぶちまけた。
 最後は固まる面々をよそに、テーブルに拳を何度も打ち付ける私を、実体化したレオニダスさんに抱きしめられて終わった。


 ごめんね立夏ちゃん、ボクはヒトへの思いやりにかけていたよってロマンが言った。
 とても寂しそうに。
 それでも彼らが掲げる大義と、私が私の意思で特異点に赴ける意思は重なっていないと思う。
 ただ私がそうであるように、彼らもまた同じく巻き込まれているのだと理解はした。


 その後はダ・ヴィンチ女史がいつもの突き抜けた調子で言ったのだ。
 立夏君がここまで腹を割ったんだ、どうせなら君たちも吐きだしたまえって。
 そしたら出るわ出るわカルデア職員のストレスが。
 ロマンが目を白黒させていたのがおかしい。


 万能の天才、ほんとさすがだわ。
 一瞬で空気をかえて、ついでに溜まっていた澱を吐きださせたんだから。
 多分これはいい切っ掛けだったし、その後職員さんたちと色々話して私ももう少し頑張ろうと思えた。
 世界なんて今でもどうでもいいけれど、この仲間たちを死なせたくは無いもの。


 ただこの時も、マシュは少し離れた所で激情を見せる私たちを観察していた。
 感情がぶつかり合う姿を、後に彼女は私にその感想を述べた。
 とても凄かったです。人間ってすごいですねって。
 ねえマシュ、それは映画とかを見て感想を言うニュアンスだよ。


 まあその時はそれで終わり。
 で、職員さんたちの不満の第一位は、食事のメニューの事だった。
 彼らはきっと私よりもストレスが酷い。


 それは何故か。私と言うカルデアス内の世界に本来存在していない人間を、世界に対していてもいいんですって誤魔化すための作業を延々と行っているからだ。
 それをしないと私はいない物として世界に溶けてなくなるらしい。


 だからこそリアルタイムで計器をチェックし続けなければならない。
 一応交代制で休憩は取れるらしいが、現場のトップであるロマンが休まないからそういう空気にもなれないと言う。


 そんな彼ら、彼女達は言うのだ。
 栄養学的な意味では無く、ビジュアル、食感、そう言うものに特化しただけの食事、つまりジャンクフードを食べたいと。
 栄養摂取用ゼリーがここの主食だからね。
 私らはレイシフト先で普通の物を食べるけれど、彼らはそれが出来ない。
 いや時間があればできるよ。でもそんな時間が無いから栄養ゼリーになるだけ。


 私は前世でも自炊していたし、美味しいものが好きで凝った料理も作っていた。
 なら自分の息抜きと、彼らへの恩返しを同時に行えると、ロマンにとにかく3日の時間を確保してと頼み、職員さんと私は休暇になった。
 3日と言ったのは、レイシフト先で食材を失敬する時間がいるからだ。


 冬木に行けば街は燃えてるがまだ大丈夫な商店もある。
 そこに行って食材や調味料を頂くのだ。
 お気に入りのレオニダスさんを連れて山賊のマネ事である。
 でもレオニダスさんってたまに裸で豹と戦えとかキチガイ発言するからなぁ。
 あ、勿論マシュも同伴だよ機嫌悪くなるからね。


 で、食材集めの旅に出ている間、職員さんたちはローテーションで休みにしてもらった。
 のんびりしてもいいし、好きな事をすればいい。
 休んでいいよって言われて休む事自体が癒しだからねえ。


 戻ってきたら料理が得意だと言うエミヤに手伝ってもらって料理を始めたのだ。
 私の中でジャンクフードはイコール粉モンみたいなイメージがあって、それに加え職員さんにイギリス人が多いから、ウスターソースにも馴染があるだろうって理由もある。


 最初は一人でやってたんだ。
 大量のお好みを作るから、キャベツを山の様に千切りしなきゃいけない。
 生地ももったりふんわりしているのが好きだから、山芋もいっぱい擦らなきゃならないし。
 そしたらいつの間にか実体化したエミヤが一人で大丈夫かマスターって言うんで、料理出来るのか? と聞けば、割と自信があるが好きでそうなった訳じゃないんだと遠い目で苦笑いをした。
 ならやってよと言うと、例のトレースオンとか言って妙に輝く自前の包丁を出すと、残像が残る速さでキャベツを千切りにしたのだ。


 やっぱり英霊って凄いねと素直に感想を言ったら、さらに苦笑いしていた。
 まあそうか、料理の英霊とかヤだよね。
 でも彼に任せて正解だった。
 レシピを言うと、ほぼ思った通りに作ってくれたしね。


 なので私は焼きそばに専念できた。
 マシュは手伝いたそうにしていたが、今回は見てなさいと言った。
 だって料理もやはりした事無いって言うんだもの。


「先輩っ、エミヤさんっ! 皆さん喜んでいましたよ!」


 私がテキヤのニーチャンみたいに延々と焼きそばを焼いていると、マシュがこっちに小走りで駆けてきてそんな事を言った。
 ほんとに心底嬉しそうな様子で。
 まあイラッとした時はガッツリした物を喰う、これが一番だよネ。


 そうして一段落した私はマシュと並んでテーブルにつき、その向かい側にエミヤが座った。
 なんだろうね、元男だけれどこいつはほんとかっこいいと思う。
 何だよその体勢は。長い足を組みながら斜めに椅子に腰を掛け、ティーカップを傾ける。
 こいつ絶対あれだよ、女受けいいの分かってやってるぞ。
 似あっているからいいけれど。
 ってマシュ、なになに? なんで袖を引くの?


「せんふぁいこのやひひょはおいひぃでひゅ」


 ああそう、そうなんだね。
 でもマシュ、口の中を空っぽにしてから喋ろうね?
 私はソースで汚したマシュの口元をむぐむぐとナプキンで拭いた。
 それを見ていたエミヤがフッとニヒルに笑う。


「どうしたのエミヤ? 何か面白かった?」
「ははは、そう尖がるなマスター。いやね、君たちは年の頃はそれほど違わないはずだが、まるで親子みたいだなと思ったのさ」
「あー……なるほどね。でもまあ、マシュは可愛いからそうなっちゃうよね」
「先輩酷いですっ! わたしは先輩の後輩なのですからっ!」
「あーはいはい分かった分かった。マシュちゃんはかわいいでちゅね~」
「もうっ!」


 ぽかぽかと叩いてくるマシュをあやしながら私もお好みをぱくり。
 やばい、私が焼くよかよっぽど美味いわ。
 何だろう、これ普通に店で出てきてもおかしくないわ。
 私は思わずエミヤを凝視してしまう。


「……どうしたマスター?」
「エミヤあんたさ、もう料理の英霊って名乗りなよ今度から。これは凄いわ」


 これは心からの称賛だ。
 こんなに素直に人を褒めるなんて私はしないからね普段。
 流石ですよエミヤ。
 ねえマシュもそう思うよね?
 そう言うとマシュはこくこくと何度も頷き、エミヤさんは凄いですと言った。
 ほらね?


 ふと見れば、テーブルに突っ伏すエミヤがいた。
 よく分からないが、胸がすいたと思う私がいる。


 なんだかんだでいつも世話を焼いてくれるエミヤ。
 私は知っているんだよ。
 こいつは人の気持ちを察する事に鋭いんだってさ。


 あの冬木で襲い掛かってきたくせに、その後のフェイトとか言う機械で英霊を呼ぼう! ってダ・ヴィンチ女史に言われるままにやったら最初に出て来たのがエミヤだ。
 サーヴァントアーチャーって呼べって言ってたけれど、その後アーチャーは他にも来たからね。
 なんでアーチャー呼びは禁止ですって苛めてたらエミヤでいいって言ったんだ。
 白髪に褐色でむきむきボディとか名前とのギャップ酷いんですが?


 まあそんな出会いだったが、マシュの盾に助けられて無事で済んだ物の、こいつめ……と最初は思っていた私だが、事あるごとに出てきては皮肉をいいつつ私を笑わせたり怒らせたりする。
 でもそれをエミヤがする時は、大概私はぼーっと虚空を見つめている時だ。
 そんな時って頭の中ではネガティブが渦巻いているんだよね。


 修正されたら無かった事になるかもしれないけれど、それでも特異点では襲われたら倒さなきゃいけない。
 敵であっても倒せば消える前に血を流したり、断末魔の悲鳴を漏らしたりするんだよね。
 それはふとした時にフラッシュバックして気持ち悪くなる。


 最近では随分と指揮らしき事を言えるようになった。
 マシュ、レオニダス、両側から挟み込んで。
 そう、ならクーフーリン、ルーンをお願い。
 作業の様に敵を倒す。


 それはしなきゃいけない事なんだけれど、心に澱はきちんと溜まっていった。
 だから無事に戻るとマイルームではぼんやりとする。
 そんな時はどこからかエミヤがやってきて私を揶揄ったり馬鹿にしたりする。
 怒って蹴ったり追い掛け回したりすると気が付いたら気が晴れていたりする。
 完全にオカンだよねエミヤ。


 感謝しているよ?
 英霊以上に得体の知れない自分はいつまでたっても心のバランスが取れない。
 だからこういうのは大歓迎だよ。


 でもね?
 それとこれとは別なんだ。
 やられたならやり返す。
 そう教えてくれたのは外でも無いエミヤだもの。
 意趣返しはしなければ。


「令呪を持って命ずる。料理の英霊エミヤ、とびきり美味しい紅茶をいれなさい!」
「………………なんでさ」


 やったぜ。 
 明日からもまた戦えるな、そう思った。
 

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