朧月夜のとりあえずヤってみよう

版権作品の二次創作がメイン。小説サイトに投稿するまでもない作品をチラ裏感覚で投稿します。

TSして藤丸立夏になった男だが、好き勝手にやってたら某ぐだ子みたいになってた件3

 推敲してないので色々へんかも
 まあチラ裏だし是非もないよネ!


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 フェイトと言う英霊召喚を行う装置がある。
 初めてこれを使った時に、私は当然の様にこれはなんだとダ・ヴィンチ女史に聞いた。
 ここの施設の技術系は全て彼女の管轄だからね。
 というかそれを担当していた技術者がもういないのだから仕方ないと言う事情もあるが。


 この前の北米大陸での特異点を終えた私たち。
 私だけじゃなく、参加したみんなには筆舌に尽くしがたいシーンの数々で言葉にもしたくない。
 何だよあのメイヴってギャルは。ツッコミどころしかないだろう。
 ついでに言えば、クーフーリンにお前責任取ってどうにかしてこいよって思わず辛辣に責めたのは誰も責められないだろう。
 何せ一番暴れていたのは黒っぽくトゲトゲしい姿のクーフーリンだったのだから。


 聞けば英霊ってのはどこかにある居場所があり、そこに本体がいるらしい。
 だからキャスターやランサーと得物は違えど同一人物がいる訳だ。
 問題はそのクラスってのに縛られているから、本来の力を出せないって事。
 要はそのクラスに必要な力しか持たずにやってくる訳。


 そもそもこれは割と歴史のある聖杯戦争と言う魔術儀式のシステムらしく、結局はあの冬木市の過去に実際に行われた物らしい。
 そのシステムの概念を失敬し、電力を魔力に変換できるここのインフラを使って、聖杯戦争でも無いのに英霊を呼ぶことを可能にしてると言う。


 というかさ、あんな街燃える程の大事ならさ、正直迷惑だよね。
 どこかの無人島とか、それこそカルデアのある山みたいな僻地で勝手にやれよ、と。
 まあ一般市民目線が抜けない私がそう憤慨すると、クーフーリンもエミヤも複雑な顔をして笑っていたが。
 エミヤはカッコつけだからまあアレだけど、クーフーは所謂脳筋だからね。
 杖の時はいいんだけど、槍の時はなあマスターいっちょ殺してくるわとか物騒だもの。


 とにかくその儀式を機械的に行うのがフェイトで、なし崩しにマスターになってしまった私と言うぽんこつを憂慮したロマン率いるカルデア運営スタッフが、これじゃヤバいってんで冬木から帰ったら直ぐにやらされたのが最初だ。


 とは言っても何かこう緑色とか青色の幾何学模様が煩い部屋の真ん中に窪みがあって、そこにマシュの盾を置いてスイッチオンするんだよね。
 そしたら霧と言うか湯気みたいな煙にプラズマめいた光が走って出てくる。
 もうね驚きも通りこすと達観しちゃうよね。はぁ~すごいね~なんて間抜けなセリフしか出なかったもの。


 で、最初がエミヤ。続けてやったらクーフーリン。もう一度やったらクーフーリン。
 なんでさ。槍と杖だけどローブか全身タイツかの違いしかないんだって。
 それで同時に喋るとさ、ステレオ放送みたいで気味悪いのなんのって。


 まあその後、霊基ってのをカルデアのシステムに登録するんだけど、その段階で私は言ったね。
 万能の天才だって煩いあの人に。
 万能なら出来るよね? 登録してるし彼ら霊体化できて出し入れ自由なんだし。
 やれよ。やりなさいよとプレッシャーをかけて、結局できたわ。
 槍か杖で必要に応じてどっちを出すかみたいなシステム。
 なんなのダ・ヴィンチ女史。便利過ぎて気持ち悪いわ。


 ぶちぶち言ってたクーフーリンだったけど、基本あの人槍が好きらしく、まあこれも楽かって
納得してた。ちょろいよね。
 そしてその後に来たのがレオニダスさん。
 彼はスパルタって大昔の国の王様だってさ。


 歴史に詳しいと言うか、英霊の勉強を凄いしているマシュによれば、300人くらいの兵士で数千人の敵から防衛をしたとか言ってた。
 思わず変な声出たよね。筋肉ダルマだけど超イケメンなんだよね腹立つくらいに。
 でも脳筋なんだねぇ……。
 まあ普段は常識人なんだよね、頭も良いし。
 でもトレーニングさせようとしたり裸で豹と戦わせようとかするんだよね。
 意味が分からないよ。


 その時の召喚はこれで終わり。
 というのも召喚に使われる電力はかなりの物で、やりすぎるとカルデアに支障が出る。
 なので普段の稼働状態で出た余剰電力を特殊なコンデンサーに貯蓄して、ある程度溜まったら召喚をしようねってスタイル。


 その後も清姫が来てくれたりダビデが来たりしたけれど、正直今いるメンバーで充分だからそれ以外特に呼ぼうとしなかったんだよね私。
 でも流石に黒クーフーリンとギャルが辛かった。
 なので朝からロマンに付き添われて召喚をしてたって訳。


 ならさ、あのギャルにクーちゃんって呼ばれてた黒クーフーリン呼べばいいじゃん。
 強いんだし。エミヤが止めた方がいい反逆されたらどうするって言うんだけど。
 だってエミヤも最初こっちを殺しにかかってきたじゃんって言ったらぐぬぬって顔してた。
 あれは別の側面だからとかもじょもじょ言ってたけれど、こっちからすればみんな一緒なんだよ!


 ロマンによると英霊召喚は縁という不確かな物が影響するらしい。
 だから終わった特異点で出会った英霊って事でエミヤ達が来たってのもあると言う。
 そりゃそうだ。その直前までエグい目に遭ってるんだ。イメージに凄い残ってるに決まってるよ。


 だったらそれを逆手に取ればいいんだと思うんだ。
 あのクソったれの黒トゲ~なんかカッコつけて斜に構えたけど、こっちに呼んでコキつかってやる~って凄い声に出しながらロマンに合図を送る。
 やめろみたいな顔してたけど睨み返し、早くやれとプレッシャーを飛ばす。
 最近得意になってきた呪いのガンド飛ばしたろか?


 そうすると今までには無いモヤが来たよ。
 こうなんだろう、稲妻が金色って言うか虹色って言うかさ。
 あ、これ黒クーフーリン来たわ、私は直感でそう思った。
 まだモヤが終わってないけど、ロマンに向けてドヤ顔でサムズアップした。


 エミヤがおお! みたいな顔している。
 あれかな? 英霊同士のシンパシーみたいな、雰囲気で分かるぞみたいな?
 さあこい黒クーフー!
 ってクーフーリンがガタガタ震え出したんだけどなんなの?
 あっ、凄い勢いで走って出ていった?! えっ?


「影の国よりまかり越した。スカサハだ。マスター、と呼べば良いのかな。お主を?」
「あ、スカサハさんだ! あれっ、黒クーフーじゃなかったか。でもスカサハさん無事で良かったねえ。あの後別れてから音沙汰なかったから心配したんだよ?」
「そ、そうか。まあそれはあれだ、あやつとの決着は持ち越しにはなったが、それなりに愉しめたぞ。その点ではお主に感謝しておる」
「とにかく来てくれて良かったです」


 出て来たのはスカサハさんだった。
 影の国の女王らしいお偉いさんだ。
 見た目はシースルー生地の黒い全身タイツと言う完全に職質不可避な煽情的なやつ。
 なんだろうね、こんな黒髪とか狡いよね。
 まあ美人さんってのは分かるけれど、ババアだから私は興味は無いけれど。


「しかし、あやつがおらんではないか?」


 スカサハさんがキョロキョロと周囲を見渡しそう言った。
 そういや北米でも舎弟みたいに扱ってたよね。クーフーを。
 なんでも弟子らしいよ。
 殺さんまでもかなりスカサハさんが追い込まれるくらいにクーフーは強いらしい。


 元々は師弟だったけど、スカサハさんの姉妹っぽい人と戦争になり、怪我を負ってたスカサハさんの代わりにクーフーが戦って、勝った挙句にムラムラしたからってその人をレイプして息子が出来たらしいよ。
 完全に鬼畜の所業だよねっ!
 とは言っても、その当時の常識だと勝者の言葉は絶対らしいから普通だってさ。
 あれだよね、多分それケルトだからだよねって思うんだ。


 ああでもそうか、いち早く彼女の気配を感じて逃げたのかクーフー。
 ならマスターとしてやるべきことは1つだよねっ!


「スカサハさん、貴方の愛弟子ならここをでて左に曲がって廊下の一番奥にある部屋が彼のマイルームだから是非行ってあげてね!」
「ふっ、マスター、お主とは仲良くやれそうだ。よろしく頼む」
「こちらこそだよ!」


 こうして久しぶりの召喚はスカサハさんと言う強者が来て終わった。
 と言うかね、数人は呼びたかったんだけど、ロマンが言ったんだ。
 相当電力もってかれたから今回はもう無理ってね。
 あーなるほど、強い英霊だとその分消費も大きいのか。
 納得納得。
 じゃ戻ってお茶にしようかみんな。
 エミヤ、頼むね。


「…………最近のマスターはあれだな。容赦がないな」


 笑顔で紅茶をお願いしたら、エミヤが遠い目をしてそう言った。
 ぶつぶつと何かを呟きながら。
 あかいあくま? なんだろうねっ分かんないや!



 ☆
  


 非常に面倒臭かった特異点であるキャメロットの少し後の話。
 私はいつも22時くらいにはマイルームに戻ってベッドに入る。


 前世も含めた自分の生活サイクルを思えば、いかに健康的だろうか。
 とは言えそれには世知辛い事情がある。


 それはここに娯楽が無いと言う事だ。
 人理が焼却される、その意味はいまいちよく分からない。
 ただ現実としてカルデアの外にはいけないと言う事だ。
 どうなっているかも知らない。
 けれど、あのダ・ヴィンチちゃんが黙って首を横に振るのだからどえらい事なんだろう。


 なので一般的なネットにもつながらないからそれを眺める事も出来ない。
 それにカルデアの施設自体は山の中腹にあり、全体的に岩盤の中にあるアリの巣めいた秘密組織だ。
 なのでまともに外が見える窓もないし、当然私の部屋も無機質な物だ。


 その為外の景色を眺めながらアンニュイな時間を過ごす事も出来ない。
 だからさっさと寝るのだ。
 何もなくただ余る時間というのは存外苦痛で、考えなくてもいい事を考えてしまう。
 それは概ねネガティブな物で、それに浸ると単純に憂鬱になるからね。


 どうして私がこんな目にあうんだろうとか。
 大義とか正義とか、そう言うのは分かるよ理屈では。
 でも計数機みたいな整然としたロジックで動けないから人間はやっかいなのだ。


 何かを失敗して無力感に苛まれ落ち込む。
 誰だってそんな時はある。
 でもそれは本人からすればベストを尽くした結果なつもりだ。
 しかし結果は自分が求める物じゃ無かっただけで。
 だから失望する。落ち込む。


 そんな時に頑張れって言葉を掛けられても困るだけだもの。
 頑張った末にこうなっているのだから、じゃあどう頑張ればいいんだって自棄になるよね。
 他人から見れば頑張りが足りないからだって思うのかもしれない。
 まだ出来る余地があるよ、ベストじゃないよって。


 そうかもしれない。自分を完璧に客観視なんか出来ないからね。
 でもさ、その時、その瞬間の自分の心のキャパシティはそれが上限なんだよ。
 そしてそれはいつも一定の上限じゃなくて、精神状態に凄い左右される。


 今の状況もそれに似てて、特異点で頑張るほどに辛くなる。
 何故かってそれは自分が戦う訳じゃないからだ。
 私はマスターで、マシュ達を動かす司令塔なのだ。
 サッカーで言うと中田英寿みたいな。古いね。
 でもね、私の命令で彼女達は傷つく。


 マシュを除いたエミヤとかダビデとか、クーフーリンにレオニダス。最近ではスカサハさん。
 他にもいるけれど、全員は連れていけないからね。
 彼らはみんな英霊なんだよ。
 霊って言う時点で生者じゃないの。
 スカサハさんだけは特殊な事情で死ねない上にまだ生きているけれど。
 それでもあの宝具。クーフーリンのやつよりエグいアレ。
 あんなもん撃てる生者がいてたまるかって感じよね。


 そんな英霊を使役するのは凄いとロマンが言う。
 私のマスターとしての長所は、相手が英霊でも遠慮をしない所だってさ。
 だから本来我儘で偏屈なはずの彼らが言う事を聞いてくれる。


 でもさ、それって私が無知過ぎて危ういからって側面が大きいんだと思う。
 スカサハさんも言ってたもの。
 お主は良き人ではあるが、勇士にはなれぬなって。
 いやなりたいとも思わないけれど、そういう種類の人間なんだよ私は。


 要はほっとけないなコイツって思われているだけじゃないかな。
 それでも嬉しいけれどさ。
 でもね英霊と言う存在その物が私には辛いんだよね。


 彼らは死をいとわないんだ。
 既に生前、命を燃やし尽くす程の偉業を成し遂げたから彼らは英霊なんだ。
 だからこそ死の痛みもその後の事も全て経験者なんだよ。
 そして英霊になってから召喚される訳で。
 サーヴァントってのは人間に都合よく使役する為の建前みたいなもんでさ。


 彼らはだからこそ、最善を尽くすためには死をいとわない。
 アレは絶対に倒さないと駄目だ。
 でも正攻法じゃ無理かも。
 そうなると自分が特攻し、刺し違えて見せようかって簡単に言うんだ。
 死んで消えても本体はそのままだからね。


 ここが人間と英霊の大きな違いなんだと思う。
 人間は死んだらそれまでだから、死ぬ覚悟で臨む事はあっても、生を絶対に諦めない。
 英霊は既に死を超越した存在なんだね。
 だから身を切る様な事をして特異点を修正できても、私は無力感にどんどん苛まれる。
 だってもしそれを実際にしたなら、消える瞬間彼らは私達人間が死ぬのと同じ様に酷い目に遭うのだ。
 ただ血が吹きだす代わりに金色のエーテルになって霧散するけど。
 でも私の動悸が気持ち悪いくらい早くなるんだ。


 私はいつから私と言う人称に慣れたんだろう。
 きっともう男としての断片も残っていない気がする。
 何かあればすぐめそめそしてしまうし、弱音も吐く。
 だから余計に辛いんだよね。


 霊基がカルデアに登録された私の英霊達。
 彼らはその核みたいなものがズタボロにさえされなきゃ、何度でも蘇って笑顔で私の前にやってくる。
 でもさ、それを一つの戦術として組み込めってのはどう足掻いても無理なんだよね。


 特にマシュだ。
 彼女はエミヤ達と違って人間なのだ。
 最近知った彼女の出自。
 このカルデアでの実験で産まれたデザインベイビーだってさ。


 その生命は設計された物で、目的の為の必要条件をクリアはしている。
 逆に言えば人間としての尊厳は考慮されていない。
 つまり寿命は人間の平均寿命を前提としていない。


 この事を知ったのはロマンとたまたま酒を飲んだ時にだ。
 私は藤丸立夏としては未成年なんだけれど、本質である中の自分の趣味嗜好は消えていない。
 だから割と大人っぽい容姿を利用して普通に外で喫煙もしていた。
 自宅でも晩酌をしていたし。


 知らないよ将来の事とか健康とかなんて。
 ただカルデアに来る前ははっきり言えば性別のギャップで常にストレスを感じていたからね。
 女である肉体なんだけれど、精神が違うからいつだって女として振舞うと言う事に気を回す。
 生きている事が既に自然じゃ無かった。


 だから酒や煙草と言う物がある種の拠り所だったんだよね。
 けどある日高校から帰ると私の部屋の机の上に真新しい灰皿があって、その横には「火事にだけは気を付けてね。いつかきちんと立夏ちゃんからお話をして欲しい」とメモ書きがあった。


 そりゃバレるよね。いくら電子煙草だって言っても、多少の煙草臭さは残るから。
 まあその時は罪悪感が酷くて、すぐお母さんの所に行き、今の気持ちを話したさ。
 転生云々なんて言わないよ。
 でも自分はもしかすると性別を間違えて産まれたかもしれないって。
 性同一性障害ってやつだね。


 実際私は病気でも無いし特殊なケースだろう。
 でも現実としては全くその症状なわけで。
 心配かけてごめんなさいと謝っているうちに、どんどん泣けてきて、最後はお母さんに抱きしめられながら号泣だよ。お母さんのわんわん泣いてたけど。
 うちはお父さんがお堅い公務員で単身赴任ばっかりだから、お母さんは一人で寂しかったんだとも思う。


 だからお父さんがいない代わりに、自分がきちんと私に愛情を注がなきゃって思ってたんだろう。
 だから私が自分の辛さを言わなかった事が寂しかったみたい。
 私を信用してくれないのって意味で。


 でもそうじゃない事も分かるから、これからは何でも話してってお母さんは寂しそうに笑った。
 それがとても辛くてさ。
 あの腐れ魔術師は絶対に殺すと今でも思うけれどね。
 そしてこれを機会に、私は元の自分を完全に別物にした。
 きちんと藤丸立夏でお母さんの娘と認識できた。
 とは言え相も変わらずズレた精神とのギャップには苦しんだけれど。


 まあそこは、カルデアでもまれて結果的にはいい方向に行ったのだからいいんだけどさ。
 ブラックな環境については話が別だけど。


 何を言いたいかと言えば、親の愛って言うのをこれでもかと認識して、私は私でいいんだって肯定出来た事が、自分はやはり人間なんだっていう再確認に繋がったって事。


 そして激務で色々へろへろになっていたロマンを私は見かね、いつものレオニダスさんとの山賊行為の最中に酒を山ほど持ってきたのだ。
 で、ダ・ヴィンチちゃんに(女史と他人の様に言うと怒られるからちゃんにした)現在の状況を確認して、酔い潰しても問題無しと言うお墨付きを貰ってから彼を部屋に呼んだ。


 大事な話がある。あまり人には聞かれたくないから部屋に来て。
 声を潜めてロマンに言うと、彼は真剣な顔で「わかったよ立夏ちゃん!」と頼もしく言った。
 ファンデーションで隠しているけれど、クマがやばい頼りない笑顔で。
 多分、前に私に限界が来て暴走したあの一件、あれでロマンが変わった。
 何というか過保護な父親みたいになった。
 ごめんね立夏ちゃん、これからはボクが君を護るよ! って謎の勇ましい宣言を皆の前でしたし。
 ばっかじゃねーの。そう言うのはお前の隣にいつもいる美人さんに言えっての。


 まあいい。
 だから彼はホイホイと私のマイルームに来たさ。
 この前冬木で手に入れた食材で、エミヤにドライフルーツのたっぷり入ったパウンドケーキを焼いて貰ったんだって仄めかすとあっさりとさ。
 この男、女子かよってくらい甘党なんだよね。
 初めてマシュにこの部屋を案内された時、こいつってばここでサボりつつケーキをむざぼり喰ってたからね……。乙女かよ。


 で、実際やってきた訳だけど、まずは駆けつけ三盃じゃないが、ケーキと紅茶を出した。
 目がシイタケみたいな星型に輝くロマン。
 わーいなんてショタボーイみたいにはしゃいでケーキにくらいついた。
 そら美味いよ。あのエミヤが本気出したんだから。


 でもねパウンドケーキは水分があまりないから焦って食べると喉が詰まるんだよ。
 ほらガフッケフッって咽てるし。
 だからはい、紅茶ドーゾ。
 ロマンってばグビグビ飲んだよ。
 そして目を白黒とさせた。


 当たり前だよね?
 ヤン提督が好きな分量の三倍くらいブランデー入ってるからね?
 むしろブランデーに紅茶のフレーバーをつけましたレベル。
 いやもういっそのこと原液?


 ロマンは下戸じゃないけれど、そんなに飲む方じゃないらしいとは聞いていた。
 だからなんだいこれは!? ってなったけど、私はパチリと指をならした。
 すると部屋に入ってきたのは私の相棒ことレオニダスさんだ。
 うん、今日もマッスルだね。切れてる切れてる!


 えっ? えっ? って混乱するロマン。
 私はそれに構わずレオニダスさんに目配せをした。
 もう以心伝心だよね。令呪なんていらないよ彼となら。
 彼はこくりと頼もしく頷くと、風の様な速さでロマンを羽交い絞めにした。


「ふっふっふっ……まんまと引っかかったねロマン」
「り、立夏ちゃん?! ボクは君をこんな事をする子に育てた覚えはないよ!?」


 怯えた表情をしつつも目だけは負けないぞと強がっている風だ。
 さていつまでその強がりは続くのかな?


「女には秘密があるのよ? さてロマンくん、腹を割って話そう」
「き、君とはもう分かりあったはずだってボクは信じてたのに……」
「だからこそだよロマン。貴方が私を心配する様に、私も貴方を心配するの。私の父親気取りをするなら、まずはその身体の疲れを抜かないとだよ? トップが頑張りすぎると貴方の部下も手を抜けないんだよ? だからロマンくん、腹を割って話そう」
「わかった! 分かったから拘束をやめてくれないか!? 後なんでダミ声で言うの?!」


 ダミ声は多分こうしないといけない様な気がするんだよ。
 ふふふ、暴れてる暴れてる。けど残念、レオニダスさんを舐めたらいけないのだ。
 しかし強情だなぁ。暴力には屈しないっ! みたいな気迫を感じる。


「ちっ、レオニダスさん、やれ」
「分かりましたマスター」
「ひゃん!? やめて!? 何でボクの服を脱がすの!?」
「ロマンが強情を張るからだよ? さあ見せて貰おうか、過労で痩せた男の肉体とやらを!」
「キャーーーーーーッ!」


 まあ、と言っても、ただパジャマに着替えさせただけだけどね。
 性別は違えど、酒をいれたパジャマパーティ的な。
 リラックスできるでしょう? 


 ようは酔い潰して強制的に睡眠をとらせようと言うだけさ。
 この人まあ寝ないからね。
 あまりに不自然だからダ・ヴィンチちゃんに聞いたら……というか問い詰めたら、彼女が作った薬を飲んでいるらしい。


 前に聞いた事がある。
 いわゆるシャブとか覚せい剤って薬物の事を。
 あれって覚醒って言う位だから、精神が物凄い事になるのね。
 私が読んだ本の話だと、覚せい剤を打った後にたまたま側にあったゲームをしたらしい。
 それはテトリス的な単純なパズルだったのだけど、その中毒者は薬が切れる二日近くの時間、延々とそのパズルゲームをやり続けたらしい。一睡もせず。


 ロマンがしているのもその類いだ。
 ダ・ヴィンチちゃんが言うには、その手の脳細胞が破壊されるとか、常習性が酷い的なネガティブな副作用は排除してあるとの事。
 ただし寝ないから肉体はどんどん弱っていくってさ。
 当たり前だよね。頭はスッキリでも体力は消耗するのだから。


 まあ特異点に長い事いく場合、私の存在証明を最後までし続けるから、その間、計器から離れられないのは分かる。
 私は前線で命を張っているから、自分たちは手を抜けないってカルデア組の意思が統一されている。
 その長がロマンだから、人一倍責任感が強いのだ。


 でもそれは本末転倒ってやつでさ。
 隙を見てきちんと寝ないと。
 いざ特異点って時に薬を決めてて眠りはしなくても、過労で電池きれて倒れたら一緒なんだよね。
 だから尚更、今は次の特異点に行くための準備期間でもあるし、今は寝ないと。


 実際ロマンは最初抵抗したけれど、摂取したアルコールは疲れた身体に見事酔いを与えた。
 パウンドケーキを肴に酒をかっ喰らうと言う妙な光景だが、一度スイッチが入ったロマンはもう抵抗はせずに呑みに呑んだ。


 彼は泣き上戸だった。
 わんわんと泣きながら、ボクは辛いんだって愚痴り始めた。
 もうそうなると私の中に実は潜んでいた母性がアップを始めるよね。
 聖なるバブみが漏れちゃうよね。


 多分私は聖女の様な、或いは菩薩の様な微笑みで愚痴るロマンを膝枕し、頭を撫でながら聞き役に徹した。
 ママって呼んでも、ええんやで? そんな感じで。


 彼は語った。
 ボクは人が大好きなんだ。
 だから護りたいんだって。
 でも無力なんだっ! とかさ。
 わんわん泣きながらさ。
 思わずもらい泣きだよ……。


 そしたらロマン、言わんでいい事まで言いだしたんだよ。
 マシュが、マシュが不憫でならないって。
 ボクたちの傲慢さが彼女を生んでしまった。
 だからどれだけ詫びても足りないんだ!
 懺悔の様に彼はそう言った。


 はい、バブみ終了! 閉廷! 解散!
 ゴンって音がしたね。
 いやだって、ロマンの頭を膝に載せたまま私立ったからね?
 そら落ちるさ。


 えっ? えっ? とふいに我に返るロマン。
 そんなロマンに私は極上の笑みで言ってやったんだ。


「へぇ……それちょっと詳しく聞きたいなぁ? さあロマンくん、腹を割って話そう?」


 多分私の背後には例のスタンドバトル漫画みたいにゴゴゴゴゴ……って擬音が浮いてたと思う。
 きっと最初からモニターしてただろうダ・ヴィンチちゃんが慌てて部屋に飛び込んできたからね。
 でもさ、ここまで言ったなら、全部聞かせて貰わないとねえ。
 良いんだよ? 別に。マスター業をボイコットしてもこっちはさぁ?


 その後、ダ・ヴィンチちゃんから興味本位で首を突っ込むならやめときなって言われた。
 でもね? とっくに引き返せない状況になっているんだよ私は。
 今更どんなドッキリ仕込まれてもほーん……ってなるだけだわ。
 だから私は全部話してと彼女に向き合ったのだ。


 ってシリアスシーンなんだからさ……。
 寝るなよロマン。



 ゜★



 話をマシュの事にもどそう。
 ダ・ヴィンチちゃんの話の内容はカルデアに私が来る前の事にも及んだ。


 マシュがあの時死なずに復活したのは、彼女の中に円卓の騎士の一人が融合していたからだ。
 その名前はギャラハッド卿。英霊事情に詳しいマシュ曰く、円卓の騎士の中でももっとも功績があると言われた騎士らしい。
 そんなマシュの状態をデミ・サーヴァントと言い、人の身でありながら英霊の戦闘力を発揮する。


 マシュが造られた理由はデミ・サーヴァントを作る為だ。
 要は英霊を宿す器って目的?
 ただ表面上実験は失敗。
 当然被験者はマシュだけな筈も無く、でもマシュしかいないって事はそう言う事なんだろう。


 マシュには英霊が宿ったが意識も力も発現しなかった。
 だから失敗扱いされのだが、その後も実験で様々な薬物なんかも投薬されている。
 けどあの時の爆発でマシュは死んだ。
 正確には何もしなければ死が確定していた、か。


 傍にいた私も見ているからそれは確実だ。
 なにせ下半身が瓦礫で潰されているんだから。
 それで助かったら奇蹟どころかホラーだと思う。


 ただそれがきっかけで、マシュの中のギャラハッドは目覚めた。
 彼は眠っていたわけじゃ無く、実験に加担したくないから沈黙していたらしい。
 ゲス共の実験など協力なんかしたくはない。
 けどこの健気な少女を死なせたくないと力の所有権をマシュに渡して本人は消えた。
 高潔な騎士だからこそ、そうしたんでしょう。
 あー……この前の特異点で戦ったあいつらに聞かせてやりたいわ。


 また話しが逸れた。
 そんなマシュだからこそ、彼女もまた無垢で高潔なんだ。
 だから少ないが確かに繋がっている絆の為に命を張る。
 盾の騎士である自分に誇りを持って。


 あのポンコツの父親に今のマシュを見せてやりたいわ……。
 ああダメだ。魔術師ってホント嫌いだわ。
 その筆頭があの魔術師だけど。絶対ブン殴る。


 ああもう話しが纏まらない!
 ……そのマシュだけど、彼女はいつだって怖がっている。
 死ぬことが怖いんだ。
 当たり前だよ。私とそう年齢が違わないんだから。
 その身にギャラハッド卿がいようが、彼女はただの人間の女の子なんだよ。


 でも私を護ると言うその一点の為に身体を張る。
 それは人理を護るとか言う大義名分の為じゃない。
 私が、或いはロマンが、またはダ・ヴィンチちゃんが笑っていられる世界を護りたいからだ。
 たったそれだけのために彼女は、結果的に死んだとしてもいいのだと思っている。


 英霊達の死もいとわない精神。
 マシュの高潔過ぎて眩しい動機。
 それらはきっと、とても美しい。


 でも、それを身近で見れば見る程、自分の不甲斐なさ、情けなさが浮き彫りになるようで辛いんだ。
 それでもマシュの前では立派な先輩でいてあげたい。
 それしか私には出来ないから。
 緊迫するシーンでおどけてみたりしてさ。
 先輩、最低ですって言いながら、それでも子犬みたいに纏わりつくあの子の笑顔を曇らせたくない。


 なんで人間ってすぐ見栄を張っちゃうんだろう?
 結局は逃げ出す選択肢を自分で排除してるんだもの。


「マスターは~気楽な稼業と来たもんだ~♪ とか言えたらいいのになー」


 プカリと煙草の煙を天井に向かって吐きだす。
 腹立つくらいに直ぐ換気扇が働き煙も匂いも消えていった。


「お嬢ちゃんに暗い顔は似あわねえぜ?」


 青タイツに一本に括った後ろ髪。
 伊達な槍兵サンが目の前にいた。
 暗がりの食堂で一人黄昏てたのに。


「そうやってクーフーは何人の女を落としたのかな?」
「あー……今まで振るった槍の回数なんか覚えてらんねえなあ……」
「ヒューかっこいい!」
「だろう?  お嬢ちゃんも試してみるかい? オレの槍をさ?」


 この人もなんだかんだで優しいよね。
 チャラいけど。
 犬猿の仲に見えてエミヤといっつも絡んでるのは根が似てるからかな?
 いけないいけない。また落ちそうになってた。
 ふふっ、ならこの伊達男にもお礼をしなきゃね?
 だから私は私が出来る最大限に妖艶な表情を作って叫んだんだ。


「たすけてスカサハさーん! クーフーにおーかーさーれーるー!」
「ちょ、マスター、おまっ、やめろォ!?」
「ふっ、セタンタも偉くなったものだ。どれいっちょ揉んでやろうか。行くぞ」


 無音でクーフーの背後に現れるスカサハさん。
 忍者も真っ青だよ!
 とにかくそうして、私は今日も何とか生きてますって話。

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