朧月夜のとりあえずヤってみよう

版権作品の二次創作がメイン。小説サイトに投稿するまでもない作品をチラ裏感覚で投稿します。

【男女関係】恋愛相談の板挟みは実際ウザい【理想と現実】

恋バナと言えば聞こえはいいが、私と言うそれなりに社会経験も長く、かつ家庭も持っておりそこで幸せを感じている人間には非常にどうでもいい話だったりする。


詳細は言えないが、私が可愛がっている後輩女子がいる。
少しゆるくおバカさんな所があるが、周囲に気を使えるいい子だ。


対して彼女と5年付き合っており、現在同棲しているカレシ。
彼は私の仕事上の部下であり、つまりカップルのどちらとも面識も付き合いもあるのだ。


人間はどうしても情で贔屓してしまう生き物だから、このカップルの二人のそれぞれどの程度の肩入れをしてしまうかと言えば、7:3で彼女の方になる。


まあ私の妻も彼女を気に入っているし、一緒に呑んでいても会話に男女の面倒臭いそれが入らない気持ちのいい女性であるから私も気に入っている。


でもまぁ部下の男も仕事では非常に信頼しているから特に何か嫌な感情を持っている訳ではない。
ただ単純に知り合ったのが彼女が先であり、付き合っている期間が長い事が一番の理由だろうか?


では本題。


時に喧嘩をしつつも、いずれはこの二人、私は結婚するのだろうと思っていた。
妻もそう思っていたし、彼女もそう思っていただろう。


でも先ごろ、いつも用事があれば妻帯者であるからと気を使い、妻経由で食事等を誘ってくる彼女が、珍しく私に直接電話をしてきた。


丁度その日の仕事が終わった頃合いだった私は首をかしげつつも電話に出た。
彼女はいつもの活発な様子は鳴りを潜めており、くぐもった声で「お兄さん、助けてください……」と涙声で言った。


何やらあったらしい。
単純に心配だと思った私は、電話では話辛そうにしている彼女をとある料理屋に誘った。
仕事でも妻との食事でもよく利用している中華料理屋で、個室があるのでひそひそ話に丁度いいのだ。


その後店で聞いた話の内容は、彼との同棲を解消したいが、その事でこじれた。
あまつさえ優しかった彼に手をあげられ、怖くて話が出来ないので困っているという、割と重たいエピソードだ。


あーやっちゃったか。
別れ話がエスカレートして酷い口論に……とは誰だってあるだろう。
どちらに正当性があるかってのは実際カップル間では然して重要じゃない。
きっとその手の痴話げんかってやつは、どっちも悪いのだから。


問題は、それが関係性ってのに決定的に亀裂を与える事柄かどうかである。
この一点が守られているならば、カップルは、或いは夫婦はいくらだって喧嘩が出来る。
でもこの部分が侵された瞬間、一瞬で相手の事が生理的に無理となる。


この部分が彼女にとっては彼から殴られる部分なのだ。
これさえなければどんな酷い喧嘩だって好きの贔屓目で許せた。
でも彼はそこを踏み越えて彼は殴ってしまった。


実際彼女の長い髪を横にずらすと、耳の下の頬がどす黒く青あざになっていた。
いつもは色んなアレンジで髪をアップにしていた彼女が下ろしていた理由がこれだ。


喧嘩の理由は結婚だ。
互いにもうすぐ三十路を迎える。
女性には出産の難易度と言う物理的な制約があるから、出来るだけ安全に出産しようと思えば若く結婚するに越した事がない。


だから無理強いはしたくないが、出来ればそろそろ……彼女はそう考えていた。
それに普段の二人の私生活のスタイルは、聞いた限りでは割と亭主関白的な構図の夫婦のそれと違いない。


互いに仕事をしているにも関わらず、家事は全て彼女がしており、あまつさえ愛妻弁当を毎日彼に持たせている。
職場のランチの時に私は彼の弁当を何度も見ているが、きちんと栄養バランスが考慮された献立だったな。


小さな不満は前からあったという。
こういう料理を当たり前に作ってはいるが、作る本人は色んな料理本を参考にしたりと頭を捻っているのだ。
けれど彼はほとんど「うまい」とも「作ってくれてありがとう」とも言わず、スマホをながめながら夕食を喰うという。


毎朝出社前に洗濯をしたYシャツにアイロンがかかっていないと「何をやっているんだ」と彼は彼女をしかったという。


そう言う小さなイライラが心のオリとなって溜まっていたんだろう。
小説的に言えば伏線ってやつだ。


そしてその日、彼女は彼の誕生日だという事で、仕事が休みだった彼女は朝から出汁からきちんととった本格的欧州カレーを作ったという。


小さな可愛らしいカップケーキをいくつも作り、それを円形に並べてホールケーキに見立てたバースデーケーキも作った。
いつもは買わない様な少し高いシャンパンやプレミアムビールも準備。


後は彼がいつもの様に帰宅したら、精一杯の笑顔でハッピーバースデー!とサプライズするだけだった。


私の営む小さな会社は残業がほぼない。
何かイレギュラーがあればその限りではないが、通常運行ならばない。
その日にイレギュラーは無かったし、彼は定時で帰っている。


でも彼はその日帰宅したのは23時過ぎだった様だ。
そして待ち疲れた彼女は少し落ち込んだまま彼を迎えた。


どこ行ってたの? そう聞いたらしいが、彼は友人と呑んで遅くなったと言い、そのままシャワーを浴びる為に彼女の前を素通りした。
その瞬間、彼女は普段嗅いだ事の無いオーデコロンの香りが鼻についたと言う。


そこで彼女は腹が立った。
アンタの誕生日だっていうから料理も準備して待ってたのに、遅くなるなら連絡くらいしてよ!
そんな事を言ったが、彼は「あーすまん」とだけ返したという。


その返事が気にいらず、彼女の怒りはエスカレートし、この香りは何よと畳みかけた。
彼の返事はしどろもどろ。
連絡しないだけにとどまらず、浮気でもしてきたのか! そう思ったらしい。


それは結局浮気では無く、こっそり通っていたキャバクラだったらしいが。
そして2人の喧嘩はどんどんエスカレートしていき、最終的に貴方は結婚を考えたりするの? という所まで踏み込んだ。


その最中には今までの彼の普段からの生活の中で自分に感謝を見せない事が改めて思い出され、余計怒りはヒートアップしたらしい。
気持ちは理解できるけれどね。
私もよく料理を妻に振舞うが、せめて美味いか不味いかくらいのリアクションは欲しいし。


彼は彼女を愛しているし、いずれはしようとは考えていたと言った。
ただ冷静では無い彼女はいずれとはいつなのかと畳みかける。
深酒で眠い彼は苛立ちながらいずれはいずれだと怒鳴った。


それで完全にキレた彼女は、今までの不満をブチまけた訳だ。
ただしそれらは冷静に聞くと全て彼女に正当性のある事なのだ。
悪いが贔屓目差し引いたとしても、彼はあまりに怠惰が過ぎた。


親しき中にも礼儀あり、なんて言うが、親しいからこそ気を使うべきだと私は思っている。
むしろ肉親の様に血の濃い関係だと余計にそれは顕著で、近しい人間関係がこじれると、他人以上に厄介だからな。


当たり前だ。他人なら明日から一切かかわらなければ済むだけなのだから。
だが肉親、夫婦関係、それに準ずるカップル、これらはそうはいかない。
別れるにしてもかなりエネルギーを使うのだ。
ついでに言えば金銭的リスクも生じる。
面倒臭い事きわまりないのだ。


だからこそ普段から気を使うべき場所は気を使わなければならない。
その部分を彼は怠けていた。
この場合だって、遅くなってごめん、夕食は入れて来たけどケーキだけは貰うよとでも言えば拗れなかっただろう。


どっちが正しいかじゃなく、どこに気持ちを割くべきかなのだから男女関係は。
そうして拗れた結果、互いに言わなくていい事まで全部ぶちまける事になった。
そして言われて都合の悪い事の多い彼は最終的に言い返せない程に追い込まれ、結果彼は彼女を殴った。


一発殴ると関を切ったように乱暴になり、結構洒落になってないレベルで殴る蹴るをした様だ。


私はまず、彼女の話をすべて聞き、落ち着かせてから自宅に連れ帰った。
そして妻に事情を話し、同性だから出来る深い話を任せた。
暫く落ち着くまで泊まっていけばいいと許可を出して。


そして部下の男にやんわりと事情を知っている事を匂わせた上で、今日は妻が面倒を見るから泊まらせるよと連絡し、明日の晩食事に行こうと誘った。


その後私は彼の意見も聞いた訳だ。
関わったからには最後までやらねばフェアじゃない。
非常に面倒臭いけれども。


その後彼女は暫くうちに寝泊まりし、時間をかけて二人は話し合いを持った。
私か妻、どちらかがいる状態で。
話し合いは平行線を辿る。


彼は別れたくない。
彼女は別れたい。
僕は好きだ。
私は顔も見たくない。


結果、一か月程かかって2人は別れた。
部下は会社を辞めて田舎に帰った。
参ったな。
仕方ないけれど。


多分、どっちも悪かったんだろう。
彼が悪いのは明白だけれども、彼女だってもっと前に何か出来たと思わなくもない。
私は当事者じゃあないから、そこは何も言う権利もないし、言うべきでもないから口に出したりはしなかったが。


私も妻も、彼女も彼も。
これを読んでしまった奇特なアナタも。
誰だって恋愛の入り口は愉しい。


キスをするだけでドキドキしたり、デートで何をするかで眠れ無くなったり。
セックスをするたびに全能感に包まれ、相手と溶け合った様な満足感を抱いてみたり。


でもやはり人間は慣れる生き物で、それらの特別だった出来事はいつしかアタリマエに変わってしまう。


何かの映画でこんなセリフを聞いた気がする。


「恋って物は勢いよく燃え上がる物で、愛とはそれが燃え尽きた後の灰なのだ」


何ともシンプルな言葉だが、言い得て妙って気がする。
ただ付け加えるなら、灰では無く、熾火だとは思うが。
派手な炎は消えてしまったが、静かに、でもきちんと燃えている。
それが愛じゃないとあまりに救いがないじゃない。


まあ私の持論はさておき、この慣れてしまった状態の2人の関係で、彼らはもう戻れない場所に来てしまっただけ。


退社する事にきめた彼に私は送別会を開き差しで呑んだ。
彼は遠い目をしながら、好きだったのにな、としみじみと語った。
そして社長、女って怖いですねとも。


女が怖いんじゃない。
女は現実の怖さを知っているだけなんだよ。
男はいつまでも夢を見る事で逃避できるけれど、女性はそうはいかないんだ。
そう思ったけれど、結局は言わなかった。
ただ向こうでも元気でやれよと少し高い酒を奢った。


最後にひとつ言葉を引用する。
うろ覚えだから正確じゃないかもだけど。
これは矢沢永吉さんの著書「成り上がり」の中で見たセリフだ。


「別れるなら、どうしてもっと前に別れてくれなかったの」


これは矢沢の最初の奥さんと離婚をする際に、奥様が言ったというセリフだ。
大スターの矢沢ならば、年を少しばかり重ねようが簡単にまた恋が出来る。
でも奥様は一般人であり、矢沢と別れたら誰も彼女の事を特別視なんかしないだろう。
それゆえの女性視点での強烈な一言だ。


女性は決してリアリストなだけじゃないんです。
多分、きっと、男以上に必死に生きなきゃいけない世の中なんでしょう。


さりとて、恋愛相談は非常に面倒臭いのです、と思う今日この頃なのです。

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